far beyond


05


エドワードが顔を上げると、そこには、将軍の娘が立っていた。
「エディ・カーティス様、ちょっといいかしら?」
エドワードは立ち上がって答えた。
「あ、はい。何でしょうか?」
「まだ、あなた様にはご挨拶してなかったと思いまして、ご挨拶に参りましたの。私くしはイリア・ファレントと申します。あなた様に聞きた
いことがありますのだけれどよろしいかしら。」
「私くしが答えられるのでしたら。」
「よかったですわ。では、単刀直入にお聞きします。ロイ様はどうしてあなた様のようなお子様と婚約なさったのです?」
「なっ?!?!」
「イリア様!それはエディ様に対してあまりにも失礼です!」
イリアの発言にリザが抗議するとイリアはピシャリと言った。
「お黙りなさい!誰もあなたには聞いていません!私くしはカーティス様にお聞きしているのです。中尉風情がこの私くしに対して意見
など許しません!」
「っ!」
「ちょっと待ってください!中尉風情がとはどういう意味ですか?!彼女は私にとって姉のような存在です!今の言葉、取り消してくださ
い。」
「あなた様は私くしの質問にお答えするだけでよろしいのです。」
「では、今の言葉を取り消すまでお答えいたしません。」
「なんですって?!将軍の娘である私くしの質問に答えないですって?!
「将軍の娘であろうと、あなた様自身は将軍ではありません。」
「言わせておけばっ・・・!・・・・・・ふっ、まぁ、よろしいですわ。言いたくないところを見るとどうせあなたがロイ様を誘惑して無理矢理婚
約者にさせたのでしょう。」
「あなた様は先ほどのロイ様のお言葉をお忘れですか?ロイ様はご自分で自分からプロポーズしたとおっしゃいましたでしょう。」
「っ?!お黙りなさいっ!小娘が!!ロイ様の隣には私くしのような美しい大人の女性がお似合いですのよっ!!」
その瞬間イリアが手を振りかざしてエドワードの頬を打とうとしたが、その手はエドワードに止められてしまった。
「な、何をするのですっ!離しなさいっ!!」
「離すわけにはいきません。私くしをぶったとしてもロイ様はあなた様のものにはなりません。」
「くっ!!」
エドワードがイリアに言った瞬間にドゴンッという音と共に悲鳴があがり、柱が壊れその瓦礫がイリアとエドワードの方へと降ってきた。
「きゃーーーーーー!!」
「エディ様!!イリアさん!!」
「危ないっ!!」
「っ!!」
その瞬間エドワードはイリアに突進してイリアを瓦礫から救った。
でも、2人の周りには他の壊れた柱の瓦礫で山ができていた。
「っ!!エディ様!!イリアさん!!」
「エディ!!イリアさん!!」
しかし、瓦礫に邪魔をされて2人には声が届かなかった。そこに、ロイと将軍がハボックとリザの元にやってきた。
「何事だ?!エディは?!」
「そ、それが、イリアさんと共にこの瓦礫の山の中に。」
「何?!イリアもなのか?!」
「申し訳ありません!!将軍、大佐!!私達がついていながら2人を守ることができませんでした。」
「どういうことだ。」
「イリアさんがエディを打とうとしたのをエディが止めていて2人が密着しているときに突然柱が壊されその瓦礫が2人の方へと降ってき
たんです。その時エディがイリアさんに体当たりして瓦礫から救ったんですが、2人とも瓦礫の山に囲まれてしまって・・・。俺たちも2人
を助けようとしたんですけど、それよりもエディのほうが速くて・・・。本当に申し訳ありません。」
「・・・・・・・・・・仕方あるまい。ともかく2人を助けなければ。」
ロイがそう言った瞬間に入り口のほうから銃声が聞こえてきた。
「侵入者だーーーーーーーーー!!」
「何?!」
「大佐!どうします?!」
「大佐!!」
「マスタング君。ひとまず侵入者をかたずけよう。2人の救出はそれからだ。」
「はっ!2人とも行くぞ!」
「「はっ!」」





その頃エドワードとイリアは―
「イリア様!イリア様!大丈夫ですか?!」
エドワードが気絶したイリアを起こしていた。
「うっ・・・・。エディ様・・・・?」
「ああ、イリア様。お怪我はおりませんか?」
「ええ、大丈夫よ。あなた様が助けてくださったの?」
「ええ、まぁ。」
「ありがとうございます。あなた様は命の恩人ですわ。・・・・・それと、先ほどは申し訳ありませんでした。あなた様に嫉妬していたのです
。私くし、本当にロイ様のことを慕っておりましたの。だから、ロイ様に婚約者がいると先ほどお聞きしたときには嫉妬で狂いそうでしたの
。本当にごめんなさい。私くしのわがままのせいであなた様に嫌な思いをさせてしまいました。」
「いいえ、いいんです。私くしもついカッとなってしまい、失礼なことを言いました。申し訳ありま・・・せ・・・ん・・・・。」
言い終わるか終らないうちにエドワードはその場に倒れてしまった。
「エディ様!!」
イリアが慌ててエドワードを起こすとエドワードは真っ赤な顔をして苦しそうに息をしていた。
「エディ様!大丈夫ですか?・・・・・・・っ!すごい熱・・・・。」
イリアがエドワードの額に手を当てるとその額はすごい熱を持っていた。
「・・・・っ!ごめんな・・・さい・・・。今日・・・本当・・・は風邪をひ・・・いて・・・いたんで・・・す・・・けど・・・無理を言って・・・出てきた・・・んで
す・・・。」
「まぁ!ロイ様はこのことをご存知なのですか?」
「いいえ・・・。ロイ様には・・・言ってい・・・ませ・・・ん。」
「なぜ?」
「・・・・今日・・・ロイ様は・・・あなた様・・・の・・・警護・・・を依頼され・・・ておりま・・・した・・・の。私くしが・・・風邪だとわかれ・・・ば・・・今
日の・・・パーティに・・・行かな・・・いと・・・言い出し・・・そうで・・・。」
「私くしの警護?」
「ええ。今日・・・あなた様を・・・誘拐・・・すると・・・予告が・・・入ってい・・・たん・・・です・・・。」
「では、私くしのためにあなた様は無理してこのパーティに来られたのですか?!」
「それも・・・ありま・・・すけ・・・ど、ロイ様・・・のため・・・でも・・・あり・・・ます・・・。私くしの・・・せいで・・・お断りし・・・て、昇進に・・・響くよ
うな・・・ことを・・・したく・・・なかった・・・のです。」
「エディ様・・・・・。あなた様は本当にロイ様のことを愛してらっしゃるのね。」
「えっ?!」
「負けましたわ。私くしはロイ様のことはあきらめますわ。」
「えっ?・・・あの・・・。」
「さ、助けが来るまで少しお眠りになって。これだけ熱が高いのですもの話すのもお辛いでしょう。」
「で、では、お言葉に甘えて、少し寝さしていただきます。」
エドワードは内心、違うんだけどなぁ〜しかも適当に言っただけだし、イリアさんには悪いことしたかなぁ〜、と1人微妙に天然なことを思
っていた。
「私くしが膝枕をしてさしあげますわ。」
「えっ!!いや、いいですよっ!!」
突然イリアにそう言われエドワードは飛び起きてしまった。その瞬間、エドワードは立ちくらみを起こしてしまった。
「ああ!無理なさらないで。さぁ、遠慮しなくてよろしいんですのよ。」
「・・・はい・・・。」
エドワードはイリアに押され渋々イリアに膝枕をしてもらった。渋っていたエドワードだが、膝枕をしてもらうと、すぐに寝入いってしまっ
た。
「ふふ、可愛らしい寝顔。ロイ様が本気になるのもわかりますわ。」
イリアがエドワードの頭をなでていると後ろの頭上から声が降ってきた。
「よう、あんたが将軍の娘か?」
「!!」
イリアが驚いて後ろを向き上を見上げると、男が2人いた。
「そうですわ。あなた方は何者です?」
「俺たちはあんたを誘拐しに来た者だ。」
「なんですって?!」
「俺たちはあんたを誘拐するためにあんたをここに閉じ込めるようにしたんだ。」
「では柱を壊したのものあなた方ですの?!」
「ああ、そうさ。他の奴等に邪魔されねぇようにするためにな。さて、では捕まってもらいますよ。イリア・ファレントさん。」
「嫌ですわ!」
「そうかい、じゃぁ力ずくで連れて行くしかないようだ・・・。」
「おい、ちょっと待て。もう1人いるぜ。」
「何?!」
今までしゃべらなかったもう1人の男がちょうどイリアで死角になっていたエドワードをみつけた。すると、2人の男は地面に降り、一瞬の
間にエドワードを抱き上げ、イリアの両手を掴み動けないようにした。
「っ!何をなさるの?!離しなさい!」
「ちょーっと、静かにしててくれよな。」
そう言って男はイリアの口を自分が持っていたハンカチで塞いだ。
そして、エドワードを抱いていた男がもう1人の男に言った。
「見てみろよ。こいつ、かなりの美少女だぜ。」
「ひゅ〜。本当だなぁ〜。」
「こいつ、目覚まさねぇし、好都合じゃねぇ?こいつ人質にしようぜ。」
「でも、将軍の娘を誘拐してこいって言われたじゃねぇか。こいつ、何者かわかんねぇしよ。」
「将軍の娘に聞けばわかるんじゃね?」
「それもそうだな。・・・おい、イリア・ファレントさんよ、こいつが何者か知ってるんだろ?」
ハンカチを取られて自由になった口だが、イリアは口を開こうとはしなかった。すると、イリアの方にいた男はエドワードに銃口を向けた

「言わねぇとこいつの頭に風穴があくぜ?」
「っ!!・・・・・・・・・彼女はエディ・カーティス様。ロイ・マスタング大佐の婚約者様ですわ。」
イリアは顔をしかめながら渋々言った。男達はニヤリと笑った。
「へぇ〜ますます、好都合だな。ロイ・マスタングの婚約者様とわね。」
「じゃ、こいつで決まりだな。」
「ありがとよ、教えてくれて。お礼にここから出してやるよ。」
「きゃあ!!」
男はいきなりイリアを肩に担ぎ、瓦礫の山を登っていった。
頂上に着くとイリアを抱えていた男がいきなり大声で叫び始めた。
「おい!!ファレント将軍!!マスタング大佐!!」
呼ばれた2人が振り向いた先には、男達に抱かれたエドワードとイリアの姿だった。エドワードは苦しそうな表情をしている。
「イリア!!!」
「エディ!!!」
「おっと、動かないほうがいいぜ。こっちには2人も人質がいるんだからな。」
「ぐっ!」
将軍とロイが走り出そうとしたとき、男たちに止められてしまった。
「だが、人質は2人もいらねぇ。将軍さんよ、あんたの娘は返すぜ。ほらよっ。」
そう言ってイリアを抱えていた男はイリアを空中へと放り投げた。
「えっ!!きゃーーーーーーーーーーー!!!!」
「くっ!!」
そのときロイがとっさにスライディングをしてイリアを助けた。
「じゃ、あばよ!!お前等引け!!」
「こいつはもらっていくぜ。」
男たちは入り口のほうから攻めていた男達に命令をしてエドワードを抱えて庭のほうへと逃げていった。
「大佐!!イリアさんは俺たちでなんとかします!」
「大佐はエディ様を!!早く!!」
「すまない!」
ハボックとリザに起こされ、ロイは2人が逃げていった庭へと走っていった。





「待て!!」
男たちが塀を乗り越えようとしているところでロイが追いついた。
「何の用だ?マスタング大佐殿?」
「彼女を返してもらう。」
「それはできねぇ相談だ。っと!」
エドワードを抱えていないほうの男がいきなりロイに飛び掛ってきた。
「お前は先に行け!」
「先に例の場所に行ってるぜ。」
「ああ、後で落ち合おう。」
エドワードを抱えていた男は塀を乗り越えて外へと行ってしまった。
「エディ!!!待て!くっ!」
「あんたの相手は俺だぜ!」
飛び掛ってきた男はロイに炎を出させないように連続で攻撃してきた。ロイは避けるのが精一杯で反撃が出来なかった。しばらく続くと
男がいきなりロイの腹へと蹴りを入れ、ロイが動けないでいる間に塀の上にのぼった。
「そろそろ時間だ。じゃあな、炎の大佐殿。」
そう言って男は塀の向こうへと消えていった。
「ま、待て!!!!」
後にはロイしか残っていなかった。
「くそっ!!!!」
誰もいなくなった庭にはロイの叫び声がむなしく響いていた。